日常と君と、③

まさか、まさかとは思っていたが。
ありえない、こんなこと。
「転校してきた、マキナ・クナギリです。」
もし、この世界に神様がいるのなら、とてつもなく意地悪な神様だろう。

「それじゃあ、マキナの席は…エースの隣だ。」

それも、とびっきりの。


「なあ、エース。」
「ん、なに?ナイン。また宿題やって来なかったの?」
「そうじゃねえよ。まぁ、忘れたけど。」
結局、忘れたんだ。
「じゃあ、なに?」
「いや、転校生のマキナのことだけどよぉ…」
ナインの口から出た言葉に、思わず固まる。
今日はやけに、あいつが出てくるな、
「アイツ、どっかで見たことあんだよなぁ。」
「ふーん、どこだろうね。それよりも宿題はいいのか?次、クラサメ先生の授業だぞ。」
「ああ!!ヤベェ!エース、写させてくれ!!」
まったく、ナインは相変わらずだ。


あー…、やっとお昼休みだ。
今日はどこで食べようか。
「…て、あれ?」
弁当箱が、ない。
そいえば朝、慌てて出て行ったから忘れたんだ…
「最悪だ……」
どうしよう、ナインとクイーンには先に行っててもらうとして…
「お探し物は、これかな?」
「あ、」
机の上に置かれた弁当箱を持つ手を、ゆっくりと遡る。
「…マキナ。」
遡った先には、ニッコリと笑顔を浮かべ、こちらを見つめる今朝も見たばかりの見慣れた(そこまで見慣れてもいないが)顔があった。
「エース、忘れて行っただろ。」
「ああ、ごめん。」
弁当を受け取り、足早に教室を出ようとする。
マキナが呼び止めるのを、無視しナインたちの所へ向かう。
が、
「あら、エースじゃない。あ、マキナも、ちょうどいい所に。」
…本当に、今日はついてない日だ。



……
………
気まずい…
「…なあ、クイーン。なんでアイツを呼んだんだよ。」
「いいじゃない。それに転校生なんだから、仲良くしてあげなきゃ。ねっ、エース。」
「あ、う、うん。」
気まずいなあ。
「あの、俺、邪魔…だったかな?」
場の空気を察したのか、マキナが申し訳なさそうに口を開いた。
「ううん、そんなことないわよ。私たちは平気だから。」
「そっか…」
マキナとクイーンの会話を最後に、そのあとはただただ、無言が続いた。


6時間目も終わり、ようやく自由になる。
「んー……はあ、」
今日はいろいろとありすぎて、疲れた。
早く帰って、風呂にでも入ろう。
「エース、帰ろう。」
うーん、まあ、どうせ家は一緒だし、いっか。
「ん、いいよ。」

「ねえ、マキナじゃない?」

後ろからかかってきた声にマキナが振り向くと、そこには見知らぬ女が立っていた。
「レムじゃないか!!」
「マキナ!久しぶりだね!」
訳が分からず、呆然と立ち尽くしていると、マキナが振り向き女の紹介を始めた。
「こいつはレム。俺の小学校からの幼馴染なんだ。」
「初めまして。レム・トキミヤです。」
嬉しそうにレムと喋っているマキナを見てると、
なんで、なんでこんなに、

イライラするんだろう。

「…ねぇ、マキナ。話が、あるから校舎裏に来て欲しいんだけど。」
「え、でも、エースが…」

「行けよ。」

「えっ?」
「行ってやれよ。僕は平気だから、」
「エース…」
「行けよ!!」

「……分かった。」

「じゃあ、またな。」
そういって、背を向けて歩いていくマキナ。
隣に居るのは、僕じゃなくて、レム。

イライラして、悲しくて、苦しくて…
何なんだろう、この気持ち、
辛くてしょうがない、酷く息苦しい。

「何なんだよ、これ。」

マキナ…



続く



ウピャァ!
なんだこれ、恥ずかし!
ウピャァァァァ!!
でも、書いてて楽しかった^^
では、次回を乞うご期待!!