No.1:暗がりに揺れる妖しき光は地を結う 「電灯灯々日々」

ある日、とある廃ビル。

日差しが強くガラスのない窓からは直に入り込んでくる。

・・・暑い。
とにかく暑くて日陰にいても汗が次々に吹き出てくる。
「・・・朝日奈?」
ボロボロになったフェンスの向こうから同い年ぐらいの青年が顔を出す。
「・・・。」
「無視すんなや。」
「別に、無視はしてない・・・」

彼の名は『朝日奈 雷』
長身細体。左目の下には稲妻の刺青。
どう見たって女にしか見えないが、
列記とした男である。

これだけ聞けばまだマシな青年であろう。
しかし、彼の背負っているそれが、違和感をかもし出している。

黒いバットケースに入れられた銀の金属バット。
ただし、鉛の入った鉄の長いバットである。
もちろん、そのような金属で出来ているのならとてつもなく重い。
地面に置けば、コンクリートでさえも少し窪みができる。
それほどまでに重いものを、

アイツは片手で振り回すのだ。

そう、雷はとてつもない怪力だ。
どこかのバーテン服の男の様に、自動販売機すら軽々と持ち上げてしまうほどである。
まさに化け物だ。

ただ、違和感の原因はこれだけではない。

小脇に抱えた古めの型のテレビ。
これがもう一つの原因だった。

「持っていてくれるか。」
「ちょ、おま!!」
こんな重たいもの持てるか!

バットを俺の側に立てかけ、テレビを手に持ち、

そのままスッポリと頭に被る。

すると、テレビ人間の出来上がりである。
彼はバットをケースから出し、肩に担ぐと、

「行くか。」

一言そう言って出て行く。


さて、これから彼が巻き込まれることに、
俺も雷も、今の時点では、

気づかなかった。





続く・・・